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「熱を出すと、お前はいつも、俺の布団の中にもぐりこんできたじゃないか」
「そんなの、ガキのころの話だろう」
言いながら、まさか高熱に浮かされて、そんなことをしでかしてしまったのかと焦って身じろぎしたら、またゴンと固い物にぶつかった。
「ううん、痛ぇ」
ぶつかった主は、痛いと言いながらも、あたった場所をボリボリ掻いている。秋哉だった。
秋哉は起きてくる様子もなく、またすうすうと寝息を立て始めた。
「これ、どうなってんだ」
ゆっくりと辺りを見回してみると、寝ていたのは自分の部屋ではなく、来生家のリビングだった。
フローリングの床いっぱいにマットレスや布団を敷き詰めて、そこで寝ていたのだ。
そして布団からは、春一と秋哉の他にも、頭がふたつ覗いていた。
それは、
「ホラ、起きてるんだろう冬依。いい加減布団から出てこい」
春一が掛け布団をめくると、鈴音と冬依。
冬依は眠る鈴音にしっかりと抱きついている。
「てめっ冬依。何やってんだよ」
思わず冬依の襟首をつかんで引き離す夏樹。
すると春一が、
「夏樹と同じ気持ちだが、でも夕べのお前も、同じ状態だったぞ」
気にくわなそうな顔で言う。
「あ?」
「鈴音と抱きついて寝てたんだ」
「俺がか?」
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