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見渡せば、来生家のリビングだ。
「俺、ここでずっと寝てた?」
聞けば、春一は苦笑しながら教えてくれた。
「ああ、どうやら部屋中の布団をかき集めてきたみたいだな」
夏樹と春一、それに秋哉と鈴音と冬依。
5人がくっつき合って、生まれたばかりの仔犬みたいに、リビングの床で寝ていたらしい。
秋哉に担がれたのは、汗で濡れたシーツを変えるためではなく、リビングまで連れてくるためだったらしい。
「寒くなかっただろう」
春一に視線を戻すと、静かな声でそう聞いてきた。
正直にうんとうなずく。
人の体温は温かかった。
「歩けるなら、部屋に戻ってちゃんと寝ろ。それで、しっかり治せ」
春一に命じられて、ゆっくりと身を起こす。
正直、まだここにもう少しいたい気持ちもあったが、眠ったまま起きる様子のない鈴音の前に、春一がすっと体を割り込ませてきた。
この状況に、ずいぶん我慢を強いられているらしい。
思わず苦笑してしまいそうになるのを耐えて、
「ほら、お前も来い。床で寝ると体が痛くなるんだろう」
ついでに、もう目を覚ましているはずの冬依の腕を引っ張った。
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