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すると秋哉が、決まり悪そうに頭をかいて、
「あー、アレだ。スズネはあつくて連れ出せなかったんだ」
「鈴音、体調でも悪いの?」
熱中症のニュースは耳に痛いほど聞くし、北海道から出てきた透子にとっても、都会は地獄の釜の蓋が開いたように暑い。
それでも幼なじみを出迎えないはずがない鈴音だから、思わず心配して聞くと、冬依は小さく首を振った。
「違うよ透子さん。体の具合が悪いのは春兄の方。ちょっと怪我しちゃってね。おととい退院したばかりなんだ」
「え、春一さん、怪我したの? 退院したばっかりって、そんなに重傷だったの?」
以前に透子が訪ねた時も、次男の夏樹が階段から落ちたとやらで、包帯だらけだった。
今度は長男の春一が怪我で入院していたという。
怪我の多い兄弟だ。
「入院するような怪我って、一体何をしたのよ」
「ヘーキ、春兄の場合、自業自得だから」
意外にも、冬依は冷たく言った。
兄弟仲は良かったように思うが、反抗期だろうか。
冬依が横を向いてしまったので、代わりに秋哉が、
「退院したばっかなのに、ハルのやつ、スズネと一緒に来るってきかなくてさ。ホラ、スズネもちょっと前に手術したろう」
「あ、ああ、ブライダルチェックで引っかかった件ね」
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