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結婚前のブライダルチェックを勧めたのは、なにを隠そう透子である。
そのこともあって、鈴音の体にちょっとした不具合が見つかったことは、鈴音から直接聞いていた。
もちろん手術のことも知っていたが、経過も良好で、北海道の実家に帰って療養する必要もないくらいだった。
(実は帰ってくるのを楽しみにしていた透子もいるのだが)
しかし秋哉は、
「ハルの心配性にはキリがねーんだ」
なるほど。
怪我をして入院したのは春一なのに、その春一が鈴音を心配して、一緒に来ると言ってきかなかったらしい。
「そしたらさ、今度はスズネまで、ハルの外出はまだ早いって言いだして、ぜんぜん話が進まねーんだよ。だから、トーコには悪いけど、オレたちふたりで来た」
うんざりしたように言う秋哉に、透子は、
「なるほど」
ともう一度うなずいた。
体調万全とはいえない春一と鈴音が、お互いを心配しあって、外出するしないでもめる。
本人たちは真剣だろうが、傍からみたら、ただイチャついているようにしか見えない。
となると、最初に秋哉が言った、
「あつくて連れ出せなかった」
の『あつい』は、『暑い』ではなく『熱い』の意味か。
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