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夏樹の本性を知らなければ、ついフラッとなってしまいそうな色っぽい微笑みだが、透子は頭を振って、その妄想を追いだした。
「私は鈴音に会いに来たのよ。あんたじゃないわ」
入り口を塞いだままの夏樹を押しのける。
夏樹は肩をすくめただけで、さほど抵抗もなく、
「どーぞ」
両手を開いて道を譲ってくれた。
その時、シャツが全開になって、夏樹の裸を目の当たりにしてしまう。
思わず顔を覆って、指の隙間から覗いてしまったのだが、前は傷だらけだった体は、痣も全部消えて、綺麗になっていた。
透子は安心してホッと息を吐く。
もしかして、これを見せてくれるために、夏樹はシャツ一枚の姿で透子を出迎えたのだろうか。
まさか……。
透子は、頭を振ると、勝手知ったる様子で、用意してあったスリッパに足を入れて、家にあがり込む。
ちょっとずうずうしいかなと思うが、黙っていると、来生家のイケメンたちにペースを乱されっぱなしになる。
一歩間違えば、妙な感情まで抱いてしまいそうになる。
逃げるように、リビングに続くドアに手をかけた透子に、夏樹が肩越しに声をかけてきた。
「行ってもいいけどさ。きっとまだイチャついてるぜ。俺がさっきまで春の邪魔してやったから」
「なるほど……」
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