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そういえば、鈴音と春一は、お互いを思いあって、目も当てられないほど熱いのだと、秋哉も教えてくれた。
やはり、今透子が行くのはお邪魔だろうか。
ふっと透子の顔に影が落ちる。
見上げると、息がかかるほど近くに夏樹が来ていた。
「俺たちも負けずにイチャイチャしとく?」
「なんでそうなるのよ」
透子は思い切り、夏樹の足を踏みつけてやった。
夏樹に悲鳴をあげさせたら、ちょっとすっきりして腹が据わった。
春一に会うのは、去年の秋以来だから、8ヶ月ぶりだ。
長かったのか、短かかったのか。
春一は以前、透子を襲った暴漢から、体を張って守ってくれた。
恐ろしくて悲しい目に合い、そこから救われて、透子は春一にちょっとときめいてしまったことを思い出す。
でも、あの時感じたドキドキは、今思えば、完璧な吊り橋効果で、脳の勘違いなのだと理解している。
事件に当てられたせいで、心臓が誤作動を起こしたのだ。
だから、時間がたった今、春一に会っても大丈夫。
やましい気持ちなどもう二度と抱かないはず、と、透子はレバーハンドルを押し下げてドアを開けた。
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