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でも、
「あ、掃除機を使った方がいいですよ」
透子の忠告は遅く、ガラスの破片で切ってしまったらしい春一の指からは、赤い血がにじんでいる。
「あーあ、やっちゃった」
呆れて言えば、春一は照れくさそうに笑って頭をかく。
「……」
冬依のように可愛いわけでもなく、秋哉のような愛嬌があるわけでもない。
夏樹のように無駄に色気を振りまいたりもしない。
だけど、春一はイケメンなのだ。
短髪で切れ長の涼しげな目をした、とびきりのイケメン。
弟たちとはちょっとタイプが違って、少し近寄りがたいところもあるが、でもそんな人が、黙って割れたガラスを片付け、女子の軽口も笑顔でいなし、その上、ちょっとドジなところなんかを見せてくれたりするなんて、
「……」
胸がキュンとしてしまう。
ギャップ萌えというヤツだ。
こんな風に、無意識のうちに女の子を意識させる、罪作りなイケメン。
春一はこんな風に無自覚に、これまで何人の女の子を悩ませてきたのだろう。
鈴音はいい子だから、もしかしたら、春一がモテるかどうかなんて、気にしたこともないのかもしれないけれど、でも、鈴音の本当の幸せを考えたら、こういうところは、ちゃんと本人が自覚しているにこしたことはない。
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