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欠点探し編
人の波にあふれていて、ちょっとボオッとしていれば、誰かの肩にぶつかってしまう。
数え切れないくらい人がいるのに、全員が他人。
「また来ちゃったなぁ」
千影透子は、相変わらずの都会の喧騒に目を細めた。
透子は北海道で、人より牛の数の方が多い田舎町で育った。
そんな透子がわざわざこの街を訪れたのは、幼なじみの雨山鈴音の結婚のお祝いのためである。
すると、
「透子ちゃん、ここだよー」
人懐っこい声に誘われるまでもなく、周囲から大注目を集めていたふたりに目がいった。
「久しぶり。元気だった?」
屈託のない笑顔で駆け寄ってきたのは来生家の末っ子の冬依だ。
彼がそうすると、一面に花が咲いたように、パアッと明るくなる。
微笑む冬依は、クルンとしたマツゲにバラ色の頬、まるで妖精が舞い降りたかのような可憐な美少女だ。
「元気よ。冬依くんも変わらず元気そうね」
だけど彼は、この春中学校を卒業したばかりの、確か男の子だったはず。
そのはずだが、
「そのスカートもよく似合ってるね」
「ホント? ありがとう」
冬依はスカートにふんわりブラウス姿で、完全にこれから避暑に出かけるお嬢様スタイルだった。
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