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「それで家を飛び出してきたの?」
母親が麦茶を出しながら呆れたように言う。
「だって賢人さんが子作りしてくれないんだもん」
「春奈、親の前で子作りとか恥ずかしげもなく言わないの」
「しばらく家にいる」
「賢人さん心配なさるでしょう」
母親が眉根を寄せて春奈を咎める。
「いいのよ。私のことなんてもう嫌いになっちゃったんだから」
「賢人さんがそう言ったの?」
「言ってないけど…私との子供が欲しくないってことはそういうことでしょ」
「賢人さんが可哀想よ」
その時、家のインターホンが鳴った。
「ほら、きっと賢人さんよ」
母親が嬉しそうに言う。
春奈は仏頂面なままだ。
母親が玄関へ向かう。
「春奈!春奈!」とすぐに母親に呼びかけられる。
春奈が玄関に向かうとそこには賢人が立っていた。
「春奈、帰るぞ」
「やだ、帰らない」
「春奈!」
「賢人さんなんて大っ嫌い!」
そう叫ぶと賢人が泣きそうな顔をするから。
それを見た春奈の瞳からもボロボロと涙がこぼれ落ちる。
「もう私とは別れて!」
「春奈!」
春奈は走って自室に引っ込んだ。
涙が止まらない。
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