しあわせな行為、なんて

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「賢人さんの嘘つき!」 春奈はボロボロ涙をこぼしながら賢人を睨んだ。 高校を卒業して賢人と結婚した春奈は、すぐに賢人の部屋での暮らしを始め、大学に通いながら結婚生活を送っていたが、この春無事大学を卒業した。 今は専業主婦をしている。 賢人は春奈をデロデロに甘やかしてくれる。 下手くそな料理も文句ひとつ言わず食べてくれる。 二人は幸せだった。 けれど… 「別に嘘なんかついてねぇよ、ただ春奈のためを思って…」 「そんなのどうとでもなるじゃない!本当は私との子供なんて欲しくないんでしょ⁉」 「そんなわけねぇだろ」 そう、大学を卒業したのに賢人が一向に子供を作ろうとしてくれないことに春奈はしびれを切らしていた。 「私もう辛い…」 春奈が俯いて涙をこぼす。 「だから今、仕事が忙しくて育休とか取ってやれねぇんだよ。春奈の負担になるだろ?」 「そんなのいらないっ!」 「俺が嫌なんだ。二人の子供、一緒に育ててぇ」 賢人が真剣な目を向けてくる。 「だって…そんなの…いつまで待てばいいかわからないじゃない…」 「待ってくれ、春奈」 「賢人さん…ひょっとしてもう私の事も嫌いになっちゃったの?だから子供が欲しくないの?」 「そんな訳ねぇだろ!なんでそうなるんだよ!」 賢人が声を荒げる。 「信じられない!賢人さんなんてもう知らないっ」 春奈は家を飛び出した。
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