アンノウンの生贄

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 それから何度か日曜礼拝をした頃、奇病にかかった村人の中で、病が治る者が出はじめた。  奇病にかかる村人の数も減り、神様が我々の祈りを聞き入れてくださったのだと村人達が沸き立った。  ああ、私は弟を神様に捧げることでこの村の悪魔を祓うことができたのだ。  エーディクの無邪気な笑顔を思い出すと胸が苦しくなるけれども、多くの人の命には代えられないのだ。 「ようやく悪魔を祓えたのですね、エレミアス神父」  そう言うシスターオーエンの頬に手を掛け、私は微笑んで返す。 「ええ、そうです。私は正解を得ることができました」  その瞬間、シスターオーエンが表情を消してとても澄んだきれいな声でこう言った。 「不正解だ」  思わずぞっとした。この声は、あの日見た夢で聞こえたものだ。いつものシスターオーエンのものではない。  あまりの恐ろしさに体が動かない。そのままシスターオーエンの目を見つめていると、彼女の右目から顔のない何者かがずるりと這い寄ってきた。  何者かは言う。 「お前の弟がお前の命を請うからやり直しをさせてやったのに」  やり直し? もしかしてあの夢は夢ではなく、本当にあったことなのか?  あの夢の中では悪魔を祓うことができなくて、それは不正解なのだと思っていた。悪魔を祓えた今こそが正解のはずなのに、なぜこの何者かは不正解だというのだろう。  エーディクを生贄として捧げたことが不正解だというのか?  そんな、まさか。 「あなたは、神様なのですか、それとも悪魔なのですか」  私がそう訊ねると、何者かはこう答える。 「自分で判断しろ」  ああ、なんていうことだろう。もう一度、もう一度やり直さないと。  私はその場から駆けだして狩りに使うクロスボウを手に取り、自分の頭を撃ち抜いた。
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