王は騎士と出会い、騎士は王と出会う

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 何がって、そんなの決まっている。 「ミスコン……ね……」  決してスピードを緩めることなくチラリと後ろを振り返った。  最終選考に残るだけあって、たしかに全員美人の部類に入る容姿だ。だが普通の人間は背中に羽があったり、頭に角が生えていたりしない。手の爪が異様に尖っていて、当たると刺さって痛いなんてことはない。 「女は女でも人間の女を持ってこい! そしたら目を瞑って我慢してやる!」 「なんと! いくらリオウ陛下といえど、それは許されないお言葉ですぞ!? 人間の女性様は人の子を産むことの出来る唯一の存在! そのような方々に侍女の真似事をさせるなどもってのほかです!」 「なら一人で入らせろ!」  ――動物、魔物、植物、精霊、妖精、その他様々な生き物が共存して暮らす世界「ファミーユ」。この世界で、動物の一種である人間という生き物は現在絶滅危惧種となっている。  人間が魔物と交え、力を持った「魔族」という生き物が生まれたことにより人間同士が交わうことが殆どなくなった。そのせいで純血の人間が減少し、現在は人口千人を切っている。  人間は魔族と違って力を持たない「人」。通常なら下位に見られるが、そうならなかったのは初代国王のおかげだった。初代国王は心優しき魔物で、どうしてか人間という存在をこよなく愛していた。その影響で魔物達も人を愛し、人が国の頂点に立つことを受け入れた。
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