第2話2年前に遡って

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第2話2年前に遡って

――2年前に遡って―― クリスマスイブも関係なく仕事。 まだまだ残業が続くから夕食でも食べようとちょっと会社を抜け出し牛丼屋に行った帰り、大学時代から付き合っている彩(彼女)が偶然歩いているのを見た。 申しわけないという気持ちと、逢えた!という気持ちで、「彩!」声を掛けたところ、隣に男がいることに気が付かなくて、最初その男が彼女に耳元にささやいているのが見え、何?と思った。 そう、最初は???だったが、彼女がその男の口元に耳を傾け話を聞いてから、俺を見て一瞬気まずそうな顔をしたが、すぐに俺を睨んで、その男の腕をぎゅっとつかんで、そのまま2人で反対方向に行ってしまった。 それを見て、悲しい事にその事実に納得してしまった。 確かにショックだった。 4年も付き合って、向こうの両親にも顔を覚えてもらっていたし、ときどき一緒に夕食を食べたりして仲良くしていた。 このまま卒業して社会人になって落ち着いたら婚約して、それから結婚、という話もお互いにしていて、当然彼女の両親ともそういう話をしていたんだけど…… この会社に入った頃は、最初は頻繁に会っていたが、彼女は土日祝日休みだけど、俺は平日休みの年末年始も仕事。 もっぱら会社帰りに会うばかり。 俺がなかなか休みが取れず、彼女に無理を言って平日に休みをとってもらった時に一緒にデートしたりしていた。 しかし、俺がだんだん仕事を覚えるようになり、というか、こういう会社だから2年目で即戦力。 そうなると、毎日残業、代休すら消化できないから当然有給はとれない、年末年始は休めない。 クリスマスに関係なく残業・・・・・・だんだん会う頻度がなくなって、いつのまにかRINEの連絡くらいになっていた。 最初のうちは「じゃあ今度は少しでも時間作って会おうね」って言っていたのが‥‥‥ だんだん「大丈夫?仕事頑張って、余裕のある時でいいから会おうね」、そして最近は、「仕事忙しいでしょ、気にしないで」、ここ数ヶ月は、RINEの既読ああるけれど返信が翌日の夜だったりして、今思えばもう既にそういう事だったのだろう。 今日、遂に彼女が他の男と一緒にいるところにばったり出くわして、彩は俺を見ても声もかけず睨むだけ……確定だった。 今の会社はブラックに加え、おまけにこの業界の給料水準もかなり低い。 某経済雑誌で取り上げられる『年収の低い上場企業ワースト100』にも上位で載っている。 救いは労基の強制立ち入りがあったおかげで、それ以降は残業代がちゃんと出るようになった事。 ただこの忙しさで使う暇がないから、それでもお金が貯まる(マンションを買うには程遠いけど)。 だから彼女のクリスマスプレゼントに、それの埋め合わせにと思い、60万円もだして、彼女が好きな憧れブランドのバッグを買い、なんとか休みを作って渡すつもりでいた。
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