【62話】小崎先輩

1/1
前へ
/70ページ
次へ

【62話】小崎先輩

十月二十五日の土曜日。 今日は滋の大学の文化祭二日目だ。 一日目は一般開放されていなかったので俺は行けず·····というか、そもそも授業で行けなくて、 滋も自分は実行委員でもなければサークル等に参加してないので、お店やステージ参加が無いから行かないと二十四日の一日目は不参加。 その代わり俺が大学に行っている間は小説を読んだり、夜ご飯のお惣菜を買ってくれたりと有意義に過ごしたと話してくれた。 「蒼こっちだよ」と、滋が俺の手を握りながら先導する。 俺達は滋の大学近くの駅に到着したけど、家を出てから此処まで滋が手を握ったままで色んな人に見られて恥ずかしかった。。。 「滋···流石にヤバいから、、そろそろ手を離して」 面倒な噂になるのは避けたい。 俺の言葉に「もっと繋ぎたいのにな」と、残念そうに滋は手を離した。 駅から大学に向けて歩き始めると周りもその文化祭に行くのか方向が同じで、 「あれモデルのAo君じゃない?」とか「イケメン二人が歩いてる」等、俺達を見た人達は何かしら話していた。 まあ·····隣の発光するイケメンは全然気にしてないようだけど、、、 「俺の大学広いから着いたら先ず離れた時用に集合場所を決めよう」と、滋に言われて俺は頷く。 ··········確かに向かってる間も沢山の人達がその大学に向かってる。 高校の頃の夏祭りでも離れて迷惑を掛けたから今度こそ離れたくない。 歩いて十五分後·····文化祭と書かれた豪華な看板が門にアーチ状に設置されていた。 文化祭は始まってまだ三十分も経ってないのに校内はお店に並ぶ人や回ってる人達で溢れかえっている。 「すごい、」 「蒼こっち」 滋に腕を掴まれて校内の敷地に入って直ぐ文化祭の案内の紙を貰った。 地図を見た感じ俺の通う大学の倍敷地が広い·····。 「今から行く所が集合場所だからね」 「うん」 連れてこられたのは人気が無い教室で、中に入ると「あれ?烏間?」と、誰かが滋を呼ぶ。 「小崎先輩お疲れ様です。一応確認ですけど今日此処何も無いですよね?」と滋はその人に話し掛け「無いよ。お前来ないと思ってた」と言われる。 小崎先輩と呼ばれてる人は黒髪のショートヘアーで目がルビーみたいに真っ赤、身長は滋より少し高く滋とはタイプが違う発光するイケメンだ。 「デートする為に来ました」 「?!」 え?!言っちゃって良いの??? 滋の発言に俺は驚いた。 「デート?じゃあこの子が?」 「はい、俺の恋人の蒼です。学内で離れたら此処に来るので宜しくお願いします」 紹介されて状況が全然呑み込めないまま俺は小崎さんへ会釈する。 ·····まさか滋が人に紹介すると思わなかった。 「はじめまして。小崎 健です」 「はじめまして、飯島 蒼です」 「烏間の話によく出てくる人だね」 滋の話によく出てくる??? 滋は日常で一体どんな話をしてるんだろ、、、 「先輩、紹介はこの辺にして·····この前話した通りです」と、滋が真面目な表情で小崎さんに話す。 小崎さんも理解しているのか「···これが此処の鍵だから。いつでも入って大丈夫」と俺に鍵を手渡す。 俺は「は、はぁ、、」と受け取ったけど·····そもそも此処の学生でも無いし、教室の鍵借りて大丈夫じゃないと思う、、、、 「蒼、この教室は俺と小崎先輩しか使わないから平日何時でも来ていいよ」 「そうそう。飲み物は⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····」 何故か二人からこの部屋についての説明を受けた。 ◆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇ 「さてと、何処行こうか」 小崎さんとわかれた後滋に聞かれ、 「うーん、じゃあ先ずは此処からまわろっ」と地図を指差す。 俺が最初の目的地に選んだのは玉せんのお店で滋も「いいねっ」と乗り気で二人で向かう。 「あのっ、Aoさんですか?」 「お二人で回ってるんですか〜?」 「この後時間ありませんか?」 「ミスターコン出ますか?」 「·························。」 玉せんのお店に向かってるだけなのに歩く度声を掛けられ、その度に色々断っている。。。 隣を歩く滋は既に疲れた表情を浮かべていた。 「滋大丈夫?」 「なんとか··········。蒼は凄いね、俺···これが続いたら発狂する自信しかないよ」 「発狂って···、」 きっとこれが嫌で記憶を失っていた時の烏間は髪を伸ばしてたんだろうなぁ·····、、、 目的地の玉せんのお店に到着して列に並んだ。 「蒼、玉せんの後は何食べたい?もしくはまとめて買った後あの教室で食べる?」 「え?りんご飴とかケバブ、クレープ、みたらし団子にそれからー···」 「ぷっ、はははっ、、そんなに食べられないでしょ」と、俺が話してる途中で滋は笑い、発光するイケメンが笑ったもんだから周りにいた人達は男女問わず頬が赤く染まった。 相変わらず罪深いイケメンだ。 「いやいや、前よりは食べられる様になったから」 滋にとっては今も俺は少食なのかな? 「そうだね、じゃあ·····今回も食べきれなかったら手伝ってあげる♡」 滋はイタズラを考える子供の様な笑顔で言う。 「むっ、、まあ···その時はお願い」と、俺は拗ねつつ一応お願いした。 玉せんを食べつつ色々回っていると先程お世話になった小崎さんと金髪の綺麗な男の人が歩いてるのが見えた。 「滋、滋」と俺は隣で玉せんを食べる滋に声を掛ける。 「ふぁに?(なに?)」 「小崎さんも誰か待ってたんだね」 「え?」 俺の目線の先を滋は見て「あー、先輩の隣りにいるのは先輩の恋人だよ」と言われ俺は驚いた。 まさか恋人だったなんて、、、 「恋人の人綺麗な人だね」 同い年位に見えるけど足がすらっとして綺麗·····。 「そう?俺は蒼の方が可愛くて綺麗だから分からないけど」と、滋は耳元で言ってくる。 「っ、」 まさかの不意打ちで俺の耳と顔は熱い。 「そんな事より·····」と滋は俺の左の人差し指に自身の人差し指を絡ませてきて「俺だけ見ててよ」と言う。 「〜〜〜っ?! み、見てるよ?」 「見てない。先輩とか見てるしさ」と、何故か少し拗ねてる。 「滋のお世話になってる人だから気になっただけだよ、妬いてるの?」 俺は冗談ぽく尋ねた。 「·····好きな人が他人の話しして妬かない奴はいないと思うけど」 相変わらず変な所は子供っぽい。 俺は可愛いな、と思って滋の絡んだ人差し指以外の指も絡ませて恋人繋ぎをして「俺は滋だけだよ、だから拗ねないで。ね?」と言う。 すると今度は滋の方が頬が赤く染まって、 「ん、、分かった」と頷く。 文化祭で人混みも凄いし手を繋いでても大丈夫だろうと思った俺はその後も気にせず色んな食べ物を滋と一緒に沢山買った。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加