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と言い終わる前に湖にドンっと突き飛ばされた。驚きながら首だけなんとかそちらに向けると、今まで見えなかった女の子の顔が見えた。そのまま湖に落ちると、遠くから「まだしばらくはこっちに来ちゃだめだよ」という女の子の声が聞こえた気がする。
ぱっと目が覚めると白い天井が広がっていた。身体がすごく重い。なんとか首だけ横に向けると、目を赤くした父さんと母さんが椅子に座ってそこにいた。
「陽介!!」
眼を見開いて驚いた母さんはわあわあ泣きながらおれに抱き着いた。父さんは誰かを呼んでいる。
「よかった、陽介。あなたまであの湖に連れ去らわれたのかと思った、よかった。戻ってきた」
そんな母さんの声をおれはどこかぼんやりとした頭で聞きながら、あの女の子のことを思い出していた。最後に見えたあの顔は、どこかおれに、母さんに似ていた気がする。
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