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◇◇◇◇◇
「先生、どうしたんですかボーッとして」
「ちょっと過去のことを振り返っていた」
「どんな?」
「秘密」
「……ふーん」
若干膨れ上がった少女は、心の中でどういう感情を渦ませているのだろう。時間を共に過ごしているうちに、互いの心情が理解出来るようになるのだと信じたい。
何を考えているのか分からないが、機嫌がいいわけではないとははっきり分かるその顔が、今はただ可愛いと感じた。
「なんで笑ったんですか?」
「なんでも。ほら、夜になる前に引っ越し整理は終わらせるぞ」
「あっ! 勝手に物は触らないで下さいね!」
「分かってる」
俺と両親が隠している秘密を知ったとき、彼女がどういう顔をするのか。
嫌悪だろうか。
拒絶だろうか。
ショックだろうか。
……しばらく苦労が絶えなさそうだ。
どんな顔色を示したとしても、その表情は――
『それとも、独り占めにする?』
その表情は、俺だけの秘密にしたい。
―了―
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