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再会
次の日の午前中に先生の診察も終わり、無事に退院できる運びとなった。
暦は四月に入っていた。
私は三月の下旬にこの病院に運ばれたそうだ。
カウンセリング室で、先生と一緒に葛西さんを待っていた。
私は葛西さんとの再会にドキドキしていた。
葛西さんは約束の時間より早く来てくれた。
「久しぶり。」彼は少し照れ臭そうに私の顔を見て挨拶した。
「あ、あの、この度は本当にありがたい申し出をしてくださり…」私は深々と頭を下げながらお礼を続けようとしたが、
「あ、いい。そういうのは柄じゃねえから。」と遮られてしまった。
「いい?記憶が戻ったり、変わったことがあったりしたら直ぐに病院に連絡するんだよ。それから来週の診察は必ず来てね。」
「先生、ありがとうございました。」
「じゃ、みお、行こうか。」
「えっ」
葛西さんは、いきなり私の名前を呼んだので驚いてしまった。
「あれ、名前、みおじゃなかった?」
葛西さんはキョトンとした顔で言った。
「い、いえ…そうだと思うんですけど…」私は顔が赤くなってしまった。
するとそれを見て先生がプッと笑った。
「先生、何かおかしいですか?」私は先生に尋ねてしまった。
「いや、君たち微笑ましくてお似合いだと思ってね。何だか若夫婦みたいだ。」
「な…!」
「えっ…」
私は更に顔が赤くなり、葛西さんも顔が赤くなった。
「それじゃあ、葛西さんよろしく頼むよ。みおさん、お大事に。」
先生は私たちの様子には気にせず言葉を続けた。
「ありがとうございました。」
私はお辞儀をした。
「荷物はこれ?じゃ、行こう。先生ありがとうございました。」
葛西さんも頭を下げた。
葛西さんは私の下着の替えなど入った荷物を持って部屋の外へ歩き出した。
私も慌てて後を追った。
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