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「響くんは島の方でしたっけ。」
「ああ、病院の先生から聞いたんだ。そうだよ。俺、島で学校の先生をやってる。」
「先生!?」
私は驚いてしまった。
「…何だよ。どうせ筋肉バカって言いてえんだろ。よく言われるからな。」
響くんは不貞腐れて言った。
「ち、違うよ。そんなことないよ。」
私は慌てて否定したが、響くんの不貞腐れた顔が可愛いくて思わず笑ってしまった。
すると響くんは驚いて私の顔を見た。
「みお、初めて笑ったんじゃねえか?」
「…あ、そうかも…」
「そうか。」
響くんはそう呟いて、そっと私の頭を撫でた。
えっ、何で、どうして?
私の顔はまた赤くなってしまった。
響くんも私の様子を見て、慌てて手を下ろした。
「ご、ごめん、また俺、距離感ちけえな。」
「う、ううん大丈夫。」
その後のタクシーの中は無言になってしまった。
タクシーは船の出航所に着いた。
響くんが
「俺、切符買ってくるからみおは、待合室で待ってて。」
と言われて、奥のソファが並んでいる所に座った。
日曜日の午後だからか、そこそこ人は座っていた。○○島は観光地でも有名だからだ。
私前にもここに座っていたんだよね。響くんは暗い顔をしていたって言ってた。彼が気になるぐらい。
でも全然思い出せない。
自分のことを思い出そうとすると頭の中が霧がかかったようになって何も思い出せなかった。
響くんが切符を買って来てくれた。
「すみません…あの、お金を払います。」
財布の中のお金はまだ残っていた。
病院の支払いは行政の方から、取り敢えず生活の基盤ができるまでは保留になると言われた。
「いいよ。俺、働いてるし。出世払いで。」
そして私をジロジロ見つめた。
「みお、普通にOLさんとかやってたように見えるな。」
「そうですか?」
「ああ。堅気っぽい。」
「堅気って。」
私は吹き出してしまった。
「い、いや、言葉が悪いだけで、みおはちゃんと働いていた感じがするから…」
響くんは焦って言った。
そして、隣に座って私の顔を見つめた。
「あの時と今、全然顔付きが違うよ。」
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