私の過去

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兄は初めて会って握手をしてくれた時から優しかった。 妹が出来たことは素直に嬉しかったようだ。 兄は受験勉強で忙しく、家にいることが少なかったがいる時は一緒に遊んでくれた。 でも、兄は王子様過ぎて私は兄というより親戚のお兄さんに近かった。 だから喧嘩というものは全くなかった。 兄がいる友達から話を聞くとまるで様子が違ったが、私は元々一人っ子だったので優しいお兄さんで良かったとしか思わなかった。 兄は無事に第一希望の私立中学に合格した。 男子校だった。 両親は私にも私立中学の受験を求めた。兄の中学校の姉妹校が女子校なので、そこを受験することになった。 その中学校は兄の通う中学校よりは難易度は高くなかったが、兄と同じ様に塾に通って受験対策はしないといけなかった。 私は習い事を辞め、塾に通うことになった。しかしピアノは母が続けなさいと言った。 目指すことになった中学校は大学までエスカレーターで上がることができ、大学には音楽科もあったからだ。 母は私を音楽科に入れたかった。自分もピアノを習いたかったと言っていた。家庭の事情で出来なかったそうだ。 母の想いもあったが、私自身もピアノを弾くのは好きだった。だからピアノを続けることには抵抗なく、寧ろ塾の方が嫌だったぐらいだった。 そして…私は兄に対する感情に変化が起きつつあった。
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