中学時代

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時は過ぎ、私は中二、兄は高三になった。 ある休日の夕食の時、兄が口を開いた。 「僕、家を出ようと思ってる。」 「県外を受験するのか?」父が言った。 「うん、滑り止めも県外の大学がいいんだけど…」 兄の高校は上の大学がなく、皆受験し多くの生徒が有名大学に合格していた。 私は兄が県外を受験することは全く想像していなかった。 「自分の行きたい学部は県内にないのか。」 「いや、学びたい大学の研究室の教授が県外の大学なんだ。僕は出来れば院にも行きたいと思ってる。」 「そうか…志が高いことはいいことだ。自分が後悔しないように勉強しなさい。」 父は兄が家を出ることに全く反対はしなかった。 母も勿論賛成した。 私はショックだった。 お兄さん家を出るんだ。院にも行ったら六年は帰ってこない…そんな… 夕食の後、私は意を決して兄の部屋のドアをノックした。 「はい。」と返事がしたので「澪です…お兄さん話があるの。」と言った。 ドアが開いた。 「澪、どうした?」兄は少し驚いていた。 兄の部屋に入った。兄は椅子に座った。 私は床に座ろうとしたが兄はベットの上に座るよう促した。 「お兄さん、県外の大学に行くのは決定なの?」 「合格すればね。」 「そう…」 私は気分が沈んだ。 兄は立って私の隣に座った。 「澪…俺が家を出るのは嫌なのか?」 「うん…寂しくなるなと思って。」 兄は黙って私を見つめた。 そして全然違うことを言った。 「澪…孝輔のことはどう思ってる?」 …え?孝輔さん?
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