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響くんと甲板に出た。
天気もいいので、他にも景色を眺めている人がそこそこいた。
「あそこの手すりのところが空いてるけど、行く?」
「うん。」
響くんと一緒に景色を眺めた。
「綺麗だね…」私は呟いた。
「みお…やっぱりここでも思い出すことはねえ?」
「うん…」
「まあ、昼と夜では全然感じが違うもんな。あの夜は俺、大学の友達と内地で飲んでて、遅くなって最終便に乗ったんだ。」
「響くん、内地の大学に行ってたの?」
「ああ、この島には大学はねえからな。高校までだ。」
「そっか、そうだよね。どの島にも大学はあるわけじゃないんだよね。」
「そういう常識は覚えてるんだな。」
「うん、知ってるって感じで、でもじゃあ、いつどこで知ったのかはわからないの…」
「そうなんだ。だから、一過性なのか…」
響くんはそう言った後、言いづらそうに続けた。
「みお、あの手すりに身を乗り出してた。」
響くんが指した所は、他のお客さんが立っていて景色を眺めていた。
「それで、慌てて俺『何してる!』って声を掛けたんだ。そうしたらみお、俺の声に逃げるようにして手すりを超えて海に飛び込んだ…」
そうだったんだ。
「俺、腕を掴もうとしたけど、間に合わなくてすぐに後を追って飛び込んだんだ。」
「響くん…すごいね。夜の海だったんでしよ?」
「俺、物心ついたときから島の海に潜ってるからな。素潜りは今でもしてるし、すぐだったからみおを助けることができた。」
「響くん…本当にありがとう…」
私はそう言ったが、響くんは辛そうな顔をした。
「でも…結果的にみおは海に飛び込んだショックで記憶喪失になってしまった。それは、あの時俺が大声を出して追い詰めたからだ…だから、俺のせいなんだ…」
「ち、違うよ。その状況ならきっと誰が止めてくれても飛び込んでいたんじゃないかな。それに響くんが助けてくれなければ私、死んでたよ。だから響くんは私の命の恩人で、記憶喪失もあなたのせいじゃない。」
「いや、もっと冷静な人だったらみおを飛び込む前に引き留めれたと思うんだ。こんな状況になったのは俺の責任だ…!」
「響くん…」
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