新たな出会い

3/12
127人が本棚に入れています
本棚に追加
/276ページ
夏休みに入り、兄は院を辞めてこっちに戻ってきてくれた。 私はピアノ教室の受付のバイトと、新たにオムライス屋さんのバイトをしていた。ピアノの練習もあり忙しかった。兄も試験勉強をしないといけないので、いつも一緒ではなかったが、いる時は家事もよく一緒にやってくれた。 料理の腕は結構上がった。家の片付けをしている時に母が書いたレシピ本が見つかり、それを見て作るようになった。 何より美味しくできると兄が褒めてくれるのが嬉しかった。 私がバイトがない日などは兄と出掛けて、ショッピングモールに一緒に行って買い物をしたり映画を観たりした。今まで兄と二人で出掛けたことがなかったので、私は内心デートをしているみたいで嬉しかった。お互いの服を見るのも楽しかった。 でも、兄といればいる程切なくなった。兄はあくまでも私のことは、妹として大切にしてくれてると思っていたからだ。 戻ってきてからは勿論添い寝もなくなった。たまに頭を撫でられるぐらいだった。 公務員試験が終わり、九月に入ると兄もバイトを始めた。前ほど家にはいなくなった。 私はオムライス屋さんでたまたまシフトがよく重なる男の子と、親しく話すようになった。彼は同じ大学一年生で、名前は櫻井勇樹といった。 元々バイトに入った時から一緒になることが多く、わからないところを聞くと彼は親切に教えてくれた。 男の子に免疫がほぼない私でも、彼は話しやすい感じの人だった。 優しく教えてくれるところが、兄に少し似ていると思った。顔は整っている方だった。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!