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ある日たまたま櫻井君とバイト先で二人きりになった。店長が急用ができたと、オーダーストップをしたら帰ってしまったのだ。デパートに入っているオムライス屋なので、そこまで広い店ではなく、夕方は店長の他にはホールとキッチンのバイト二人しか入らないことも多かった。
二人で片付けをし終えた。ここのバイトは仕事が終わるとまかないを食べて良かった。
「庄野さん、何オムライスにする?」
櫻井君が声を掛けた。
「櫻井君と同じでいいよ。」
「じゃあ、俺たまにはチキンオムライスにしようかな。ベタに。それでいい?」
「うん、ありがとう。あの、櫻井君が作ってるところ見ていい?ここのオムライスの卵ふわふわだから、少しでも真似したいなって。」
「庄野さん、料理するんだっけ。」
「うん。」
「いいよ。見に来て。」
お客に出すオムライスは店長が作っていたが、まかないはキッチンに入ってるバイトの子が作ることも多かった。
私はキッチンに入り櫻井君が作っているところを見た。
「凄いね。こうやって作るんだ。」
私は櫻井君がチキンライスを玉子で巻くところをまじまじと見つめた。
「庄野さんも自分で作ってみる?」
「えっいいの?」
「うん。」
私は櫻井君の見よう見まねで玉子を巻いてみた。
でも結局お皿をフライパンに押し付けたままひっくり返すことができなくて櫻井君に手伝ってもらった。
カウンターの席で二人一緒に並んで食べた。
「庄野さんも初めての割りには上手にできたんじゃない?」
「でも結局櫻井君に手伝ってもらったしね。」
「今度は一人で全部作ってみるか。」
櫻井君はそう言って私の頭を撫でた。
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