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「だから俺、みおに償いをしたいんだ。せめて生活の基盤ができるまでか、もしくは記憶を思い出すまでは力になりたいと思って…」
響くんの決意は固そうだった。私がこれ以上言っても意思を覆すことは難しそうだった。
「あ、ありがとう。でも、結果的に響くんの家族にもご迷惑掛けてしまうけど…」
「まあな、でもお袋は人間助け合いだからって最終的には俺の話を理解してくれたよ。姉貴はちょっと、まあ…最初はごちゃごちゃ言うかもしれねえけど、そこはみおに会えばいずれ大丈夫かなって。」
「あ、あの、お父様は?」
「オヤジは俺が小学生の時に死んだんだ。」
「そ、そうなんだ…聞いちゃってごめんなさい。」
「いやいいよ。だからかな、うちは残された家族で支え合って生きてきたから、困ってる人を見捨てられねえのかもな。」
「…素敵な家族だね。」
「どうも。」
私が言うと響くんは照れ臭そうに返事をした。
私の家族はどんな風だったんだろう。でも、響くんの家みたいだったら海に飛び込むなんてしなかっただろうな。大していい家族ではなかったのかな…
私は暗い気持ちになった。
すると響くんが私の両肩に手を置いた。
私は思わず響くんを見つめてしまった。
「みお、俺、みおの力になるよ。だから一人で抱え込まなくていいから。」
響くんは優しい顔で私を見つめていた。
「あ、ありがとう…」
私たちは、船が島に到着するまでそのまま海の景色を眺めていたのだった。
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