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彼の家族
船が島に到着した。
私は響くんの後に続いて降りた。切符を回収してる人は響さんと年齢が同じぐらいの若い男の人だった。
「あれ、響、そのコ誰?」
その彼は響くんに話し掛けて一緒にいる私を不躾に見た。どうも響くんと知り合いのようだった。
「あ、ああ、親戚のコ。」
「…親戚?お前、こんな親戚のコいたっけ?」
「じゃあな、マサト」
響くんは、そう言って前に進んだ。
私も後に続いたが視線を感じて後ろを振り向くと、マサトと言われた男の人は釈然としない顔で私たちを見ていた。
響くんは、しばらく歩いて口を開いた。
「さっきのヤツは俺の昔からの幼馴染み。」
「あの、いいの?親戚だなんて…」
「ああ、みおは俺のお袋の親戚ってことになってる。その方が詮索されねえから。」
「ごめんね、何か色々と。」
「別にいいよ。」
船着き場の駐車場に着いた。
響くんは、一台のバイクの前に立った。
「みお、ニケツできるかな。」
「えっこれ、響くんの?すごいね。」
「ここから俺の家ちけえし、スピードもそんなに出さないから後ろに乗ってくれねえか?」
「わかった。」
ヘルメットを被って響くんにつかまった。
バイクの後ろに乗るとすごく風を感じたが、響くんはあまりスピードを出さないようにしてくれた。
15分ぐらい乗って、バイクが停まった。
「みお、着いたよ。」
バイクは定食屋のようなところで停まった。
のれんには「定食屋 しまかぜ」と書いてあった。
「ここが響くんのお家?」
「ああ、俺ん家定食屋なんだ。今はお袋と姉貴が手伝いにきて店を切り盛りしてる。」
「そうなんだ。」
「今はちょうど夕方前で店もそこまで忙しくねえからちょうどいいや。みんな待ってると思うぜ。」
「う、うん…」
今から響くんの家族に会うんだ。
私は緊張して喉がゴクンと鳴った。
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