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病室で
……………。
うっすら目を開けると天井が見えた。
ここは…?
ゆっくりと左側に首を傾けた。
見るとカーテンが開いていて、ベットがあり、若い男の人が起き上がって雑誌を読んでいた。
ふと、その男の人はこっちを見た。
「あ、あんた、気が付いたのか。」
男の人は驚いた様子でベットから降りて私を見下ろした。
「あの…ここは…?」
「病院だよ。」
「…病院?」
「あんた、覚えてねえの?船から海に飛び込んだんだよ。」
「…え?」
「と、とにかくナースコールするぞ。」
男の人は焦った様子で私の枕元にある、パネルのボタンを押した。
直ぐにお医者さんと看護師さんが来てくれた。
私を簡単に診察してから、カーテンを開けた。
さっきの若い男の人がベットに腰掛けて、心配そうにこっちを見ていた。
「身体は大丈夫そうだね。大きな外傷もないし、…君、どうしてここにいるかわかる?」
「…わかりません。その、隣にいる方に私が船から海に飛び込んだって…」
「その通りだよ、すぐにこの彼が後を追って飛び込んで、君を引き上げてくれたから助かったんだ。」
私はその彼の方を見つめた。
「あ、ありがとうございます…」
「お、おう…」
彼は、少し照れ臭そうな顔をして呟いた。
「…ところで、君の名前は?実は船に残されていた君の手荷物には携帯もないし、財布にも身分を明かすものは何も入ってなくてね。」
お医者さんが尋ねた。
「わ、私の名前ですか…?」
私は直ぐに答えようとした。
しかし、愕然とした。
私…私の名前は何…?えっ嘘っどうして言えないの?
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