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「みおは姉貴の部屋を使ってほしいんだ。」
「えっいいんですか?」
私はお姉さんの顔を見た。
「ええ。私はもう家を出てるし、それだとそのままベットも使えるからちょうどいいかと思って。暇潰しに置いてある本も読んでくれていいし、部屋の机や文房具も使ってくれていいから。」
「も、申し訳ありません…。」
「けれどそれでまあ、ただで住まわせるって訳にはさすがにいかないのよね…」
「そ、それはそうですよね。私は何をすれば…」
「しばらく店を手伝ってほしいの。」
「お店って、下の定食屋さんですか?」
「ええ。あなた、成人してるし簡単な調理の手伝いや料理を運ぶぐらいはできるでしょう。」
「た、たぶん…」
記憶を失くしてからずっと病院にいたからよくわからないけど…。
「今日からしばらくは家の店の手伝いをしながら、隆志さんと一緒に今後のことを相談していくといいかなと思ってさ。」
響くんが言った。
「仮の戸籍とか、就職とか、いずれ住むところとかの相談に僕が乗るよ。」
隆志さんが言った。
「よろしくお願いします。」
「それで、あなたの名前は一応成瀬みおっていうのはどう?成瀬ってうちの母の旧姓なの。あなたは母の親戚のコってことにしようと思って。」
お姉さんが言った。
「わかりました。」
成瀬みお…それが私の仮の名前か…
「あの、何から何までありがとうございます。よろしくお願いします。」
私は深々と頭を下げた。
「こちらこそ。しばらくよろしくね。」
お姉さん夫妻は笑顔で言ってくれたのだった。
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