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懐かしい顔
え…だ、誰?
私はその男の子に話し掛けられても、誰だかわからなくてキョトンとしてしまった。
その子は苦笑して言った。
「俺…リョータだよ。○○島の葛西先生の教え子の。」
「え…あっり、リョータくん?野球部のキャプテンだった?」
「そう、思い出した?みおさん。」
私は驚いた。
「リョータくん、どうしてここに?」
「俺、四月からこの近くの大学に下宿してるんだ。」
「えっリョータくん、大学生なの?」
「俺、今年で十九だよ。」
そ、そうか…あの時リョータくん中三だったから…
「ごめん、俺、仕事中にこんな話し掛けて。このバイトも先週から入ったんだ。みおさんゆっくりしてってね。」
「あ、ありがとう、リョータくん。」
私は目を丸くしたままパスタを食べ始めた。
び、びっくりした。リョータくん、この近くの大学って、響くんの大学か…頭いいんだ。それに、あの時はスポーツ刈りだったしTHE中学生って感じだったけど、今は髪も伸びて、ほんと話し掛けられなければわからなかった…
パスタを食べ終わり、レジに行くと会計は別の人だった。
しかし店の外に出ると「みおさん。」と呼び止める声がした。
振り返ると、リョータくんが店の外に出ていた。
「リョータくん。」
「みおさん、この店よく来るの?」
「う、うん、ここ、美味しいし、雰囲気もいいから…」
「そっか…」リョータくんの顔が嬉しそうになった。
「みおさん、連絡先交換してくれない?」
「えっ」
「俺…島から出てきたばかりでやっば色々慣れなくてさ。知ってる人に会えてホッとしたんだ。…ダメかな?」
そういえば私も三年前は不安でいっぱいだったな…
リョータくんの心境が痛い程理解できた。
「…いいよ。」思わずOKを出してしまった。
「ありがとう。みおさん、今何してるの?」
「中学校の先生…まだ講師だけど」
「マジ?俺、大学、教育学部だよ。」
「リョータくん、先生になりたいの?」
「うん…中学校の体育の先生を目指してる。」
それって…
否応なしに響くんの顔が浮かんだ。
こうして成り行き上リョータくん…瀬田遼太くんと連絡先を交換することになったのだった。
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