懐かしい顔

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「え?」 遼太くんは驚いた顔をした。 「葛西先生とは卒業後に連絡先を交換したけど、やり取りはそんなに大してしてねえよ。あの先生も今年の春に別の中学校に異動しちゃったしさ。」 「そ、そうなんだ…」 「でも、俺、葛西先生と同じ大学の同じ学科に合格したからその報告はLINEでしたんだ。先生すげえ喜んで、電話が掛かってきてさ、大学のことを色々教えてくれたよ。それで俺が成人したら一緒に飲みに行こうって言ってくれた。」 「そっか…」 響くんらしいなと思った。 「…澪さん、葛西先生と連絡は取ってないの?」 「う、うん…」 「別れてから一度も?」 「うん…」 「澪さんって今は彼氏いねえの?」 「あ、うん、いないよ。」 「ふーん……」 遼太くんはまだ何か言いたそうだったが、「結局、澪さんは先生としては何年目なの?」と話題を変えた。 「今年で四年目だよ。」 「結構経ってるんだ。じゃあさ…」 その後は、私の中学校の話になった。遼太くんの大学生活の話も聞いて、ふと彼は自分の腕時計を見た。 「もう、十時か。はええな。澪さん明日から学校だろ?」 「うん。遼太くんも明日大学だよね。」 「もう少し話したかったけど出ようか。澪さんって話しやすいな。俺、女の人とそんな話するタイプじゃねえけど。」 「先生は生徒と話せてナンボだからね。」 私は響くんの受け売りを言ってから、伝票を持って立ち上がった。 遼太くんも慌てて立ち上がった。 「澪さん、伝票返してよ。」 「何言ってるの。学生に払わせるわけないじゃない。」 「俺が誘ったから俺が払うよ。」 「そういうのは彼女にしてあげなさい。」 「いねえよ、そんなの。」遼太くんは何故かブスッとして言った。 「いいから、年上には甘えときなさいね。」 私はそう言ってさっさとレジに向かったのだった。
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