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乗ってからしばらく無言だったが、観覧車が上がり出し景色が開けてくると、思わず上ずった声を出してしまった。
「遼太くんの言ってたことほんとだね。海沿いの景色が綺麗、ここの海の水って澄んでるもん…」
視線を感じてハッと見ると、遼太くんは私の顔をじっと見ていた。
「あ、ちょっとテンションが上がっちゃって…」
私は照れ臭くて少し赤くなった。
「澪さんってさ、ちょっとのことで子どもみてえに喜ぶんだな。」
遼太くんは少し微笑んで言った。その顔に何となく甘さがあるように見えた。
「か、観覧車に乗るのも久しぶりだから…」
「隣に座っていい?」
「えっえ?」
私がいいって言ってないのに、遼太くんは隣に座った。
そして笑顔で私の顔を見た。
「り、遼太くん、近い…」
「嫌?」
「嫌っていうか…恥ずかしい…」
「澪さんって肌綺麗だよな。だから若く見えんのかな。」
「り、遼太くんって女の子にそんなことばかり言ってるの?」
「だーかーら、言ってねえって。」遼太くんはそう言って前を向いた。
「澪さんは話しやすいんだって。俺、元々そんなお喋りでもねえし。」
確かに響くんが遼太くんは硬派だって言ってたけど…
すると遼太くんは今度は私の手を繋いで、足を組み、向こう側の景色を見出した。
な、何なんだろう遼太くん…よくわからない。でも今さら手を振り払うなんてできないし…
結局私も遼太くんと手を繋いだまま、無言で景色を見ていたのだった。
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