懐かしい場所

4/7
前へ
/276ページ
次へ
乗ってからしばらく無言だったが、観覧車が上がり出し景色が開けてくると、思わず上ずった声を出してしまった。 「遼太くんの言ってたことほんとだね。海沿いの景色が綺麗、ここの海の水って澄んでるもん…」 視線を感じてハッと見ると、遼太くんは私の顔をじっと見ていた。 「あ、ちょっとテンションが上がっちゃって…」 私は照れ臭くて少し赤くなった。 「澪さんってさ、ちょっとのことで子どもみてえに喜ぶんだな。」 遼太くんは少し微笑んで言った。その顔に何となく甘さがあるように見えた。 「か、観覧車に乗るのも久しぶりだから…」 「隣に座っていい?」 「えっえ?」 私がいいって言ってないのに、遼太くんは隣に座った。 そして笑顔で私の顔を見た。 「り、遼太くん、近い…」 「嫌?」 「嫌っていうか…恥ずかしい…」 「澪さんって肌綺麗だよな。だから若く見えんのかな。」 「り、遼太くんって女の子にそんなことばかり言ってるの?」 「だーかーら、言ってねえって。」遼太くんはそう言って前を向いた。 「澪さんは話しやすいんだって。俺、元々そんなお喋りでもねえし。」 確かに響くんが遼太くんは硬派だって言ってたけど… すると遼太くんは今度は私の手を繋いで、足を組み、向こう側の景色を見出した。 な、何なんだろう遼太くん…よくわからない。でも今さら手を振り払うなんてできないし… 結局私も遼太くんと手を繋いだまま、無言で景色を見ていたのだった。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加