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愛しい人
私は自分の気持ちが整理できず、次の日の夜、千沙に電話をしてしまった。
千沙は私の話を聞いてこう言った。
「澪って前から思ってたけど結構魔性の女だよね。関わった男の人みんな陥落させてない?」
「ち、ちょっと千沙…」
「まさか九歳年下の坊やまで虜にするとはねえ。」
「千沙っ言い方っ」
「思えば学生の頃、あんたと一緒に電車で通学してるとよくナンパされたもんね。断ってたのは全部私だったけど、釣ってたのは澪だし。」
「そ、そうだっけ…」
あの頃はお兄さん一筋だったしな…
「とにかく澪はどうしたいの?私に話したってことは、その遼太くんに気があるからじゃないの?」
「えっち、違うよ。遼太くんには上手に自分の気持ちを話せなくて、それでどうしたらいいかなって…」
「澪みたいに拗らせてる女は、いっそ遼太くんみたいに若くて強引な人が合ってる気がするけどね。」
「千沙、遼太くんはやっぱり年が離れ過ぎだよ。今から学生生活を始める人なんだよ。何もこんなアラサーの女と付き合わなくても…」
「でも本人がいいって言ってるんだからいいじゃない。別に。」
「けど…」
「…澪、こうしたら?響さんに引導を渡してもらうのは。」
「えっ」
「響さんが結婚してるとか、彼女さんがいるとかはっきりしたら澪も諦めつくんじゃない?そうしたら、遼太くんのことをそういう対象で考えれるかもよ。」
「そ、そんなことないと思うけど…」
「いつまでも別れた人のことをズルズル引きずっているのもどうかと思うのよ。澪、一度響さんに会いにいったら?そうしたらスッキリするんじゃない?」
「うーん」
「そうしなよ。私はその遼太くん、いいと思うよ。情熱的で可愛いじゃない。」
「はあ…」
「じゃあ、頑張って。」
「えっち、千沙…」
千沙は電話を切ってしまった。
響くんに会いに行く?でも会って何を話せばいいの?それにもし、今さら私の気持ちを聞いても響くんだって困るだけだよね…
でも、遼太くんに煮え切らない態度をしてるのもいけないし…
私はどうするのが正解なのかわからなかったのだった。
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