病室で

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私を助けてくれた彼は、色黒で細身だけど筋肉質でガッチリしていた。顔から受ける印象は涼やかで、整っているように思えた。歳は二十代半ばに見えた。 「な、何だよジロジロ見るなよ。」 彼は少し顔が赤くなった。 「あの…助けてくださって本当にありがとうございます。あの、お名前は…」 「俺?俺の名前は葛西響」 「かさいひびきさん…」 彼はカバンからボールペンを出して、持っていた雑誌の余白に「葛西響」と書いて見せた。 「俺は今年で25になるけど、あんたも歳は俺とそう変わらないように見えるな。せいぜい違っても一、二歳じゃねえか。だから呼び捨てでいいぜ。」 「い、いえ…」 「あんた、そういや自分の顔は覚えてるのか?」 「そ、それが…」 「マジか、それも覚えてねえの?」 葛西さんはキョロキョロ見渡した。 「鏡は…ねえか。先生が持ってきてくれるかな。」 そして私の顔を見て 「あんた、可愛い顔してるよ。モテたんじゃね。」と言った。 「え?」私は赤くなった。 「いや、お、俺はそう思ったから…」彼もそう言って顔が赤くなった。 その時、さっきのお医者さんともう一人別のお医者さんが来た。 そのお医者さんは精神科医だと名乗った。 「いくつか質問するよ。君にも聞いたりすると思うから立ち会ってもらっていいかな。」 精神科医のお医者さんは、葛西さんにもそう言った。 「わかりました。」葛西さんが答えて、お医者さんの診察が始まった。
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