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「だ、誰ですか?」
私はまだ何一つ思い出していない。
家族の人だとは到底思えなかった。
「…葛西さんってわかる?」
「葛西…」
「君を助けた葛西響さんなんだ。」
「えっど、どうして葛西さんが…」
「それが…君が記憶を失ったのは自分のせいだって…せめて力になりたいって言っていてね。僕が気にしなくてもいいと言ってもきかないんだよ。」
「か、葛西さん、何を言ってるんですかね。私はあの方に助けていただいたんですよ。むしろ命の恩人です。落ち着いたら何とかお礼はしたいとは思ってましたけど、そんなお世話になるなんて…」
「ただね。赤の他人が身元引き受け人になってくれるのはまずないから、ありがたい話だと思うのよ。その葛西さんのお姉さんの旦那さんが役場勤めらしくて、あなたのことを引き受けてくれるって言ってるしね…」
佐藤さんも口を挟んだ。
「えっそんなに話が進んでいるんですか?」
「もし君がこの話を承諾してくれるなら、明日にも退院してもらおうと思ってね。葛西さんは迎えにくると言ってるし。」
「そもそも葛西さんはどこの方なんですか。」
「君が最後に乗っていた船の行き先…○○島の人らしいよ。君を彼の家で面倒を見るって家族とも話がついてるって言ってるんだ。」
「な、何で葛西さん、そこまで…」
私は唖然としてしまった。
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