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プロローグ
暗い海の淵に立っていた。
海は私を優しく誘惑していた。
楽になるよ 全て忘れられるよ
ここに飛び込めば楽になるのだろうか。
黒い波がゆらゆら揺れている。
お母さん、お父さん、お兄さん………
家族の顔が次々浮かぶ
………怜弥
一番最後に愛しい人の顔に変わった。
ごめんなさい、あなたの想いに応えられなくて。
私は手すりから身を乗り出した。
「ちょっと!あんた、何してる!!」
後ろから若い男の人の焦った声がした。
嫌!連れ戻されるのは!
私は靴を脱いで手すりをよじ登り、
「おい!待て!」
男の人が私の腕を掴む前に、
私は黒い海の中に飛び込んだ。
ごめんなさい、ごめんなさい、
でも…これで、楽になれるよね…
怜弥…………愛してる………
暗い海の中で、私の意識は途切れた。
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