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3,ハナビシソウ
3
実際に通ってみれば、この高校はとんでもない場所だった。
偏差値は確かに中の上。なのに生徒は不良が殆どで、まともに授業は受けられない。男子生徒の間でカツアゲなんて日常茶飯事だ。少なくとも、二日に一回は目にした。
そんな空間で俺が一度もターゲットに選ばれなかったのは幸いと言えるが……不思議なもので、他の生徒達にとって、俺は選んではいけない対象と認識されているような気がした。勿論、根拠などない。なんとなくそう感じただけだ。普通に生きている彼らが見えない何かに操作されているようなどと、誰かに言ったところで根拠の内には入らないし、良くて直感、悪くて頭のおかしい奴と思われるだけ。
友達など作れないだろうと、入学したその日に確信したが、何故か俺の回りには人が集まった。寄ってくる彼らは皆不良だが、荒れた姿を見せない普通の男子高校生だった。
ある日、体育祭をしたいと呟くと、まともに授業を受けない彼らが学活の時間に各自の席に前を向いて座り、それぞれの種目を決めだした。他の学年クラスでも同じ。行事なんてものは眼中にない学校全体が、突然張り切り出す。とても奇妙な光景だった。
操られているのだろうか。彼らは人の形をした人形なのではないか。
発する言葉、表情、全てが偽りに見えた。そんな彼らに、作った表情を浮かべて、その瞬間限りの友達として毎回接した。
心からの笑顔でなければ、心からの言葉でもない、嘘だらけの空間だったと思う。それでも居心地は悪くなかった。良いものでもなかったが、悪くなければいい。贅沢は言わない。
授業をコミュニケーションの時間にしか費やさない生徒しかいないのだから、当然頭のいい生徒などおらず、テストで首位をとれてガリ勉扱いでもされるのかと思ったが意外にも成績は真ん中くらいだった。テスト前、勉強を教えてくれるという彼の提案を受けなければ中の下、もしくはそれ以下だったかもしれない。
勉強面はともかく、彼が約束通りの環境を用意しサポートしてくれたかどうか、俺は知る由もない。
どうでもよかった。
結果が全てだ。
彼が環境用意してもしなくても、結果的に約束を守ればいいだけ。
約束を守りさえすれば、俺は何も言わない。
例え誰かの手を借りたとしても、彼が一切自分の手を使わなくても、全ては彼の結果となる。結果は彼が約束を守ったか、守らなかったかの二択しかない。
そして今日、その結果の最終決定を下した。
──約束通り、この学校を殺す権利を貰いに来ました。
彼は、俺の学校生活を保証してくれた。
カツアゲも、盗難も、イジメも、体罰もなかった。勉学にも困らなかった。不自由なんて何一つなかった。
とんでもない学校内であったけれど、俺の周囲は平和だった。
ただ……不満がないわけではない。
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