一話 寒がりな幽霊

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 広いベッドルームだ。  裸の男と女が絡んでいた。  男の方は俺の泰則だ……。  あんまりじゃあないかっ!!  俺は泰則に向かって叫んだ。しかし、俺の声はどうやら聞こえないようだ。  泰則は女から身を起こして、ベッドに座り込んだ。 「どうしたの? あなた…」 「いや、すまない……、どうもその気になれなくて……」  呟いた声は弱い。顔もやつれているようだ。  どうしたんだ、泰則。  泰則は太陽のような奴だった。いつも陽気に笑っていた。俺の背中をバンと叩いて大丈夫だと言っていた。  あんなに輝いていたお前は何処に行ったんだ。それに、絶倫だったじゃないか、お前。俺を、あんなに何度も──。  ああ、暖めて欲しい。今すぐ。  しかし、伸ばした俺の手は泰則をすり抜けた。もう俺は、お前に触れることが出来ないのか!?  俺は泰則を目の前にして途方にくれた。女が身を起こして、泰則の体に手を掛けようとする。泰則の側にいた俺と、女の体が重なった。  ──と、俺の体が女に吸い込まれてゆく。  わあぁぁ───!!!  始め、何が起こったのか分からなかった。泰則が俺を揺さぶって、 「おい」と言っている。  え……!? 泰則の手を感じる。俺は……!?  自分の手を見ると女の手だった。白くて細い。長い爪にマニキュア。髪も長い。腰も細い。目を上げると泰則が不審な顔で俺を見ている。  俺は泰則に抱きついた。  訳を話すより何より、泰則、お前に暖めて欲しいんだ。キスをして押し倒した。 「萌美。俺は……」  泰則は俺を振り払おうとする。俺は泰則を押さえて、まだ俯いたままのそれを口に含んだ。お互いに慣れた愛撫だった。次第にそれが元気を取り戻す。感極まったように呼んだ。 「千尋……」  俺の名前を……。  ああ泰則……、どうしてこんな事になってしまったんだろう。でも俺は、もっともっと暖めてもらいたいんだ。  俺は男の上に馬乗りになって自分の後ろを寛げた。女の体であるにもかかわらず、そこを使うのは嫌だった。泰則のそそり立ったものに腰を下ろし、ゆっくりと動き始める。  少し呆気に取られていた泰則も、俺の腰を掴み攻めてきた。早いピッチに体が熱くなる。  ああ……、もっともっと暖めてくれ。 「千尋!!」  泰則が俺の名を呼んで果てた。  ああ……、俺もイッちゃったよ。これで昇天できるかな……!?  ホワリと俺の体は浮き上がり、女から離れた。俺が女の体から抜け出たので、女はぐったりと後ろに倒れた。
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