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その為にはどうしても、もう一度この女に入って……。俺は女の方をジッと見た。
女は風呂上りで、バスローブを羽織って髪を梳かしていた。鏡に映る女の顔は少しきついがまあ綺麗な顔立ちだ。どこかで会った様な気がするが──。
思い出せないかと女の方をじっと見ていると、不意に女が顔を上げて俺の方を見た。女の手から持っていたブラシがポロリと落ちた。女は張り裂けそうなほど目を見開いて、俺を見ている。
俺が見えるのかと呑気に思った。女は手を頬にやり、口をパクパクと動かして、そして絶叫した。
「ギャアアァァ───!!!!!」
もの凄い悲鳴だった。俺のほうが吃驚したくらいだ。女は背中から後退りして、パッと身を翻すと脱兎の勢いで部屋を飛び出した。そのまま叫びながら廊下をバタバタと駆けて行く。
「いやああぁぁ───!!!」
いやって言われても、俺は今、女に憑いているから一緒に廊下を行くしかない。女の声に泰則が書斎から出てきた。泰則は書斎に居ることが多いんだ。
「どうしたんだ、萌美!?」
「あなた──!!!」
女は泰則にしがみ付いた。
「で、で、でた……。お、お、お、お化けが……!!」
「お化け……?」
「あ、あの男、ち……! いえ、違うの。お、お化けが出たの」
「大丈夫か、お前?」
泰則は女の背中を叩いて宥める。女は次第に落ち着きを取り戻し、泰則にべったりとしがみ付いた。
「あなた、私怖いわ……」
なにやら色っぽい流し目で泰則を見る。泰則と女の濡れ場なんて見たくない。
俺は女を引き剥がそうと手を伸ばした。スウッと手が女の中に引き込まれてゆく。
そして……、又、女の中に入ってしまった。
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