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帰郷
友人に会いに帰ると伝えると、父さんは「親の顔は見に帰らないくせに」と笑った。気を使わせまいとしてくれているのは有り難かったが、素直に甘えられない心苦しさもあった。
ジェイクから電話があった翌朝に寮を出た。5年経って初めて帰省する僕に、セシルさんは弁当を持たせてくれた。これで退屈な時間に華が添えられた。
汽車に乗るのは、町を出た時ぶりだ。徐々に建物が減り、トンネルを抜けると、そこは圧倒的な深緑の世界だった。
山あいを進んだ汽車は、やがて木琴の森駅で停車した。駅をはさんで町の南側にある木琴の森は、町起こしの一環で廃材を斜面に並べ、木の玉を転がして音楽を奏でたことから名付けられた。
駅を出て深呼吸をすると、懐かしい香りがした。町の北西には、ボートを運営しているフクロウの池もあり、自然に囲まれた古臭い匂いが、自分にも染み付いているんだなと感じた。
「アレックス! おかえり」
手を振ってやってきたジェイクに、僕も手を振り返した。
「相変わらずマリオネットみたいな体格だな」
「君だって等身大のティディベアのままじゃないか」
ジェイクの悪態に、僕も悪態で返すと、互いに笑って握手を交わした。
「悪かったな、お前の暇を邪魔しちゃって」
「いいさ。何をしたって暇に変わりないからね」
僕が大きく伸びをしたところへ、頼んでもいないのに迎えの車がやってきた。父に頼まれた執事のバトラーさんだった。本当は歩きたかったが、これも親孝行だと思い乗る事にした。
「話は、うちでいいだろ? その方が父も喜ぶ」
「構わないよ。久し振りにコール邸のご馳走が食べられるな」
車が家に着くまでの間、お互いの学生生活の話で盛り上がった。特にジェイクは、中学から町を離れた、僕の寮生活に興味深々だった。
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