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テーブルに広げた、手紙、ボートチケット、紙飛行機、木のボール、キャップ火薬。僕らは5つを前に、ただ腕を組むことしか出来なかった。
「暗くまでいいのかい?」
「コール邸ほど安心できる場所もないだろ。泊まるって言ってきたし」
「まったく用意周到だな」
夜になって、2人で庭の芝生に寝っ転がった。見上げた途端、僕は声をもらしてしまった。怖いくらい星が近かったからだ。
「この町は夜になると空が低くなるのか?」
「どっかの街の人間みたいなことを言うなよ。お前は腐っても、この町の人間さ」
「腐ってもは余計だ」
「ごめん。腐ったら友達は無理だ」
「おい」
僕は久し振りに本心で笑った。この町で、こんな時間を過ごすのは、初めてじゃない気がした。
「3人でよく、こうしてたなー。夏の夜空を探してって、この空に星以外に何があるっていうだ?」
ジェイクの言葉に、僕の中で鮮明に蘇ったものがあった。3人で見上げ語り明かした夏の夜空の話。そして「風邪ひくわよー」と呼ぶ、亡き母の声。
「なあジェイク。オリヴァーは、夏の夜空に何かを探して欲しいんじゃなくて、夏の夜空自体を探して欲しいんじゃないか?」
「夏の夜空自体? 何処にそんなもの」
「明日は町中を自転車で冒険することになるかもしれない。早く寝ようか」
「わかった。付いてくよ」
僕とジェイクは昔のように、夏独特のえも言われぬ期待に顔を見合わせて笑った。
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