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フクロウの池
「まずは。分かりやすいボートのチケットから検討してみようか」
「フクロウの池だな」
朝、家へ帰り自転車を持ってきたジェイクに、僕は行き先を示した。
友人と過ごす休日に、サイクリング。日を浴びるのさえ久し振りな気がした。ジリジリとした日差しに、襟足を揺らす風が心地好かった。
フクロウの形に見える事から名付けられたフクロウの池は、周りにサイクリングコースや、簡単なアスレチック遊具があり、家族連れなどが多く訪れる場所だ。
「まだ時間が早いからボートはやってないな」
「乗る必要はないさ。入り口までいってみよう」
真っ暗なチケット売り場を覗き込むジェイクの肩を叩いて、封鎖中の入り口まで行くと、池の淵にそってボート乗り場を眺めた。
桟橋には普通の手漕ぎボートと、足で漕ぐスワンボートが5台づつ並んでいた。
「そう言えばスワンボートで、よくレースやったよな」
「やった! やった! いつも無駄にジェイクの圧勝だったな」
「無駄にってなんだよ」
懐かしさに心から笑えた。僕とオリヴァーは、群を抜くジェイクをよそに、いつも競い合っていた。何がそんなに楽しかったんだろうと思った。でも夢中になっていた気持ちが蘇って、少し胸が熱くなった。
ぶらぶらとアスレチック遊具も見て回り、エピソードを思い出しては笑い合った。
「で、夏の夜空は何処だ?」
「さあ? 次いくか」
「何処にする」
ジェイクは、けさがけにした革のカバンを探って、飛行機とボールと火薬を取り出した。
「このボールなんだけどさ。木琴の森で使うやつじゃないかと思うんだ」
「ああ、転がすやつか」
結局、想い出しか見つからないまま、ジェイクの一言で町の反対側にある木琴の森に行くことにした。
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