赤レンガ工場

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赤レンガ工場

 町の北東、フクロウの池と木琴の森の間くらいの距離に、学校の行事で見学に行く、和紙を作っている工場があった。外見の赤レンガが目立つだけで、何の変哲もない町工場だった。 「なんでここなんだ? 見学でしか来たことなんてないよな?」 「そうだなー。オリヴァーの苦肉の策。て感じかな」 「はあ?」 「暗くなる前に帰ろうか。説明するのに必要な物がある」  不満そうなジェイクの視線に、僕は苦笑いを返した。  僕の部屋に戻ると、書棚から町の地図を取り出して広げた。 「ここにチケットを置いてくれ」 「こうか」  ジェイクは僕が言ったとおりに、フクロウの池にボートチケット。木琴の森に木のボール。赤レンガ工場に広げた紙飛行機を置いた。 「オリヴァーのヒントは、こうやって場所を示してる。場所がわかれば、そこに隠れたワードも見えてくる」 「ワード?」 「ボートチケットはスワンボート。木のボールは木琴。紙飛行機は和紙。スワンと、木琴と、和紙だよ」 「詳しく頼む」  ジェイクは腕を頭の後ろで組んで、考える事をやめて聞くことに専念するようだ。 「スワンは、そのまま白鳥だ。木琴は琴だね。和紙の飛行機は、飛ぶ和紙かな」 「飛ぶ和紙て? 飛ぶわし? わし!」 「分かった?」 「もしかして星座か。白鳥、琴。で、鷲?」 「そう。白鳥座はデネブ。琴座はベガ。鷲座はアルタイル」 「「夏の大三角!!」」  ジェイクは手を叩いて声を揃えた。 「何処で分かったんだ?」 「昨日、庭に横になったろ。ジェイクが『この空に星以外に何があるっていうだ?』て言った時に、オリヴァーは星座が好きだったなと思い出したんだ。それで、もしかしたらと思って」 「ほんとかよ! いや、だったら地図を見るだけで良かったんじゃ?」 「思い出したかったんだよ。この町でのこと。僕たち3人のこと」 「そうだな。楽しかった……」  僕たちは今日を思い返すように口を閉じた。 「なあ。これで夏の夜空が見つかったとして、それで何なんだ?」 「実は。僕に分かったのは、ここまでなんだ。これで何か思い出さないか?」 「ええー。夏の大三角だろ。あ、これ使ってないな」  地図を眺めながら、ジェイクがキャップ火薬を取り出した。そして跳ねるように立ち上がった。 「アレックス行こう!」 「え? 今から何処に?」 「今からだから、ここへさ」  今度は俺のフェイズだと言わんばかりに、ジェイクは地図上にある夏の大三角の真ん中を指さした。
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