冥界の魔女

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「オバサンは誰が俺を殺したのか知らないの?」 「当然知ってるけど教えてやらないよ。今回のやり直しは、〈愛の証明〉がテーマだからね。復讐劇はまた別の機会にやっておくれ」  どういうわけかペルセポネは、死んだはずの俺を生き返らせてやってもいいと言ってくれている。  ただし、謎の条件つき。 「お前を生き返らせてやるよ。お前、自分が女だったらよかったな、って死に際に思っただろ?」 「たしかに一瞬そう思ったけどさ、せっかくならアドニスを女にして欲しいんだけど」 「何でだい」  ぐっと、拳に力を入れる。 「だってアドニスが女子だったら、今世紀最高の美女じゃん!! 想像しただけで鼻血が出そう!!」  男のままでも十分過ぎるほど可愛いけど、女でも変わらずに愛するよ俺は!!  ペルセポネは、ああん?とガラの悪い声を出した。 「何であたしがお前の都合に合わせなきゃならないんだい! あたしはねぇ、別にお前らの幸せなんて願ってないの。お前が苦悩する姿を肴にして美味い酒を飲もうと思ってんだからっ!」 「女になったら苦悩すんの? 俺が?」  尋ねると、真っ赤な唇がにんまりと笑う。 「するだろうよ。お前、最後までちゃんとあたしの条件を聞きな。お前を女の身体で生き返らせてやるのは、7日間だけ。その7日間のうちに、アドニスがお前を『オリオン』と呼ぶことができれば、そのままお前を生き返らせてやってもいい」 「俺の名前を? どういうこと?」  ペルセポネは、たぷたぷと楽しげに腹を揺らした。
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