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「僕は美天が好きだから――好きな子にも、嘘はつきたくない」
切実に揺れた声で紡がれた言葉に、美天の頭に歓喜の警鐘が響き渡る。
期待してはいけない。
晴斗とは”良き友”だ。
自分にとって、晴斗自身にとっても。
きっと、深い意味はない。
それなのに、嬉しいという感情は、嵐のように渦巻いて抑えられない。
「僕は本気だ。最初は、信頼できる友達だと思っていたけど今は・・・・・・隣に君がいない日常も未来も考えられない」
「晴斗・・・・・・っ」
信じられないとばかりに凍りついた美天を、温かな香りとぬくもりは包み込んだ。
大きく見開かれた美天の瞳に、動揺は波紋していく。
言葉を失った唇に触れたぬくもりは、太陽の花のように温かくて柔らかい。
「これで・・・・・・やっと信じてくれるかな・・・・・・美天」
名残惜しそうに軽く離れた唇は、確信に満ちた言葉を奏でた。
どこか陶然と澄み揺れる眼差し、迷いのない動作は、こちらの全てを見透かされていた証のようで。
美天が身を委ねるように双眸を伏せると、甘く優しいぬくもりは、再び唇へ舞い降りた。
閉ざされた瞳から、涙が零れ伝う。
あまりに幸せで、とても恐ろしかった――。
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