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「美天――これからも、僕とずっと一緒にいてほしい」
鞄から取り出した一枚の封筒を、晴斗は差し出してきた。
白百合が咲いた綺麗な模様の封筒に、美天は首を傾げながらも中身を開けて見た。
途端、美天の瞳に驚きと歓喜が広がっていく。
「! 晴斗・・・・・・これは」
「急な話でごめん。でも、美天に受け取ってほしいんだ」
封筒の中身は、一人分の旅行券・・・・・・しかも、五泊七日間のドイツ旅行だった。
真ん中には、十二月二十五日のクリスマスを挟んでいた。
それ以上に美天が驚愕したのは、旅行券の書類の下に重ねられたもう一枚の書類だった。
既に幾つかの欄が埋められた書類を手にする美天の指先は、微かに震えていた。
「返事は、向こうへ着いた時に、聞かせてほしい」
「晴斗」
「それじゃあ、おやすみ。また明日ね、美天」
驚きで言葉が出ない美天を他所に、晴斗は照れくさそうに微笑む。
これ以上はいたたまれなくなったのか、美天の頭を優しく撫でると、扉を閉めて帰って行った。
しかし晴斗が帰ってからも、暫し美天は玄関で放心していた。
晴斗が渡してくれた書類に既に刻まれた、晴斗の名前をなぞってみる。
晴斗らしい丁寧で柔らかな字に愛おしさを覚えたが、濡らさないように気をつけないと。
嘘のように嬉しくて、夢のように幸せだった。
当たり前のように晴斗が隣にいてくれて、大切にされ、愛してくれることはあまりに幸せで・・・・・・時折、恐ろしくて、涙が止まらない夜を過ごした。
正直な話、唐突に舞い降りた夢のような現実に、感情は追いつかない。
けれど、晴斗も自分と伴にある未来を希ってくれたことは、何より嬉しかった。
こんな自分のような人間が、大好きな人に愛されるなんて。
伴に生きる幸福を得られるなんて。
数年前は、ちっとも想像できなかった。
幾つもの迷いや不安はあったが、美天の心は既に決まっていた。
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