第三章『絶望の先』

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第三章『絶望の先』

 十二月二十二日・午後三時・羽也空港国際ターミナル。  百合島最大の空港内には、クリスマス旅行に胸を躍らせる家族連れや恋人達が、行き交う。  広々とした屋内の中央に建つ、巨大なモミの木に虹色のライトアップやオーナメントを飾ったクリスマスツリーは、輝き満ちる。  クリスマスツリーを目印に待ち合わせる一人一人が、相方と手を繋いで笑い合い、移動していく中、一組だけは暫し立ち尽くしたまま。  「美天・・・・・・どうして?」  「ごめんなさい・・・・・・晴斗」  クリスマスツリーを背に佇む晴斗は、森緑色に艶めくトランクに紺碧色の身軽なリュックサックを持ったまま、首を傾げていた。  一方、晴斗に触れられないよう意図的に距離を取る美天は、手ぶらだ。  これから一緒に旅行する、いで立ちには見えない。  目を合わさないように俯く美天の異変と謝罪の意味を、晴斗は理解できない。  暫しの沈黙の後、美天は絞り出すように答えた。  「私は・・・・・・晴斗とは、」  「どういう意味、かな。美天」  「」  確かな拒絶を含んだ声で奏でられた言葉に、晴斗の瞳は初めて動揺に凍りついた。  一方、突然別れを求めてきた美天の瞳――奥では、魂の悲鳴がひしめき合っていた。  * .
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