僕の愛餓を満たす欲

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 敵と判断すれば赤ん坊でも殺してしまうベルガッド公爵の膝の上など普通は誰も座りたがらない。彼もそれを許さないし、もし誰か……例えばボクと同い年くらいの、まだ小さい彼の子供の誰かが座っていれば、公爵が許してもボクがその子を殺す。  そんなことをする未来が実際に起きたとしても、きっと彼は笑って許してくれると自信が持てた。  なぜなら彼は……。 「その判断が最も正解だというのに、頭まで残念でね」  彼の眼が、ボクの眼に注がれた。  愛おしげに見つめてくれるその眼を見ると、快感ともいえる寒気が全身に走る。  ああ……そう、その眼が好き。  自分の欲望を叶えるための、大切な道具を見る眼。  ただの道具を宝物のように見てくれるその眼。  この忌々しい眼を愛してくれる……強欲公爵と恐れられる彼の、強欲に満ちた眼が何よりも……。 「見てごらん、アイガ」  机の上に置かれていた新聞記事を、彼は小さく指で叩いた。先ほど視線を奪われていた元凶が大事な書類でないと分かると、後で燃やしておこうと決める。  暇潰しの一つが出来た喜びと、記事に書かれている馬鹿な内容を目にして思わずクスッと笑みが零れ落ちた。 「あーあ、巻き込まれた人達カワイソー。記者じゃなくて公爵に売却していれば、被害は一人で済んだのに」 「欲深い人間という生き物の本能だ。見ることすら叶わなかった欲しいものが視界に入れられるようになっただけで、他の周りのことが見えなくなる」 「公爵もそうだったの?」
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