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大好きな彼の眼を見上げて、子供ながらに無邪気に聞いてみた。
「初めてボクを見たとき、そうなった?」
ほんの少しの悪戯心だ。誰も手を添えることが出来ないだろう彼の首に自身の手をかけ、徐々に力を加えてゆく。
余裕の表情を浮かべていた彼が僅かに眉を潜めたとき、言葉に表せられない歓喜が込み上がった。お遊びに付き合ってもらった満足感に浸れば飽きるのも早く、そろそろ手を離そうかと考える。離す前に、彼に手首を捕まれて無理やり首から離された。
「まさか。と言いたいところだが、一瞬だけ」
「ははっ、直ぐに冷静になれたんだ! さすが、公爵様」
これ以上、首はやめておく。
彼でなくとも、子供一人殺すことなど冷血な大人なら簡単なのだから。
遊びはほどほどに。
相手が気に入ってくれる程度に留める。
仕方なく、新たに手を添える先は彼の頬で我慢した。
「力なんてなくても……自分の手を汚さず、証拠を残さず、完璧にボクを盗んだ……。ボクが逃げないように一人残らず掃除までして……そんなに欲しいものが次々と沸き上がるの?」
大好きな眼の直ぐ下を、親指で触れる。爪が伸びていれば、この綺麗な頬に傷でも負わせられただろうか。
「あんまりお願いされるとさ……」
妬けちゃうよ?
眼が、一瞬だけ熱くなるのを感じた。きっと餓えに限界が来たのだろう。欲することを隠しもせず、赤く光ったに違いない。
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