僕の愛餓を満たす欲

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 メテオーアの力を宿したこの赤き瞳は、願いを現実にする対価に異常なまでの愛情を求める。愛情の向かう先が自分でなければ、形のない欲望相手であろうと嫉妬に狂う。  多くの人がこの眼に魅入られ、求められ、求められる愛情に応えきれなくなり、自滅した。  公爵もこの眼に魅入られた内の一人だ。一体どこまで、この瞳の対価に耐えられるだろうか。  手の温もりはそのままに、頬に温もりを感じた。いつの間にか公爵の手も伸ばされていた。 「嫉妬に狂って俺を殺すか?」 「まさか」  だって、公爵様が死んだら誰がボクを愛してくれるの?  愛してくれるなら誰でもいい。  例えボクの本当の家族を殺した、この人でも。 「公爵がボクを殺すことはあるかもしれないけど、ボクが公爵を殺すわけないじゃん」  眼の力が目当てでいい。  愛してほしい。  うさぎは寂しいと死んでしまうんだ。だから公爵様も── 「この力を手放したくないなら、手放したくなるその日まで、欲望よりも愛してね?」  強欲な彼が、欲を叶えるこの眼を愛してくれる限り。  対価の愛情に押し潰されない限り。  ボクが何をしようと、多少のことは許してくれるだろう。  だから、いつか来る別れのその日まで。  ボクは貴方の望みを叶えるよ。
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