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森錠のロックはキーが無くては開かない
どうか、これだけは忘れないで。
忘却に飲まれたら、何かなんでも外へ出なさい。
記憶族だけが、アナタを取り戻せる。
──オモイ……ダシテ………。
聞き覚えのある、声が聞こえた気がした。
足首の装飾から伸びている金属が触れ合い、カチャリと静止の声をあげてくれる。その親切にも気付かずに、裸足の足は前へと進む。
一歩。一歩。
また一歩。
小石を踏む痛さなど、全く感じない。
隙間なく植えられた草木を掻き分けようと、手を伸ばした。
「──アトラ!」
自分を表す名を呼ぶ声に、意識を引き戻される。
殆ど無意識に森の中に入ろうとしていた足を見て、恐怖心が体の中を一気に駆け巡った。
「あ……」
僕は今、何をしようとしていたのだろう。
もう何度目か。
また……やってしまった……。
「見つけた……!」
「オブリオン……」
息を切らしている友人の姿を見て、必死に探してくれていたのだろうと察すると、罪悪感も混み上がってきた。
目の前の、怪物にしか見えない森の空間から逃げ出すように、彼のところに駆け出す。
僕が彼を掴むよりも先に、彼が僕の肩を掴んだ。
存在を確かめるように、強い力で。
「森に入っては駄目だと何度言ったら分かる! いい加減にしないと、庭に出るのも禁ずるぞ!」
「ごめんなさい……」
「言い訳は? 今回は何で入ろうとした」
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