森錠のロックはキーが無くては開かない

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 答えられなかった。  分からないから、じゃない。いつも同じことしか答えられないから。  何度も何度も同じ理由を答えて、その都度彼は呆れ、怒りの感情を内に秘める。  今も既に、怒りを閉じ込めている。問いかけに感情を込めてしまうと恐怖で僕が何も言えなくなるからと、無理して押さえ込んでいることが、一ヶ月も一緒に過ごしていれば分かるようになった。  彼もまた、僕がどうして答えないのか言葉で表さなくても察してくれる。  彼は盛大なため息で無理やり心を落ち着かせると、いつまでたっても埒が開かないこの空間に亀裂を入れてくれた。 「はぁぁ……ったく。そのチェーンは、一人で動くに不自由がない程度の長さにしていたが、こうも頻繁に約束を破るものなら短く切る」 「そうしてよ……。僕だって怖い。どこからか声が聞こえて、知らないうちに意識が持っていかれて、気が付いたら森の前。何これ……起きているときに発症する、夢遊病か何かなの?」  生じてきた震えを止めるべく、彼を掴む手に力を込めた。  先ほど小刻みに震えていた彼の手は振動を止めていて、纏っている雰囲気も普段の優しい彼のものだ。  自分よりもい精神状態が不安定な者を見ると落ち着けると彼は言っていたが、今の僕はオブリオンよりも動揺しているということだろうか。実際に動揺はしている。  この動揺が回数を重ねるごとに大きくなっているということも、自分で気が付いている。  こんな状態に陥ったとき、彼はいつも、僕を落ち着かせるために腕の中に囲ってくれた。  今回も、また。  自分の意思とは裏腹に足が動き出そうとしないように、その手で拘束してくれる。
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